紺青Diary

国際政治とアメリカ留学

春学期について

お久しぶりです。全く更新しなくてすいません。季節もすっかり夏になって夏休みも後半になってしまいました。

 

今更ではありますが、春学期の授業について記録がてら何をしたか簡単にまとめておこうかなと思った次第です。

 

春学期にとった授業は三つで、①Formal Theory l、②Statistics ll、③Experimental Method です。国際政治専攻のはずなのにメソッドだらけの学期となりました。

 

①Formal Theory l

ゲーム理論の授業です。教科書は一応 Morrow のGame Theory for Political Scienceを使っていました。例年だと教科書は指定されてなかったそうなんですが、今年はコロナのせいでオンライン開催になり、その際に自分で参照できるものがあると良いという教授の判断でこの教科書が指定されました。ただ、実際のところ授業内容はそこまでこの本に沿ってなかったです笑。Morrowの教科書は1994年の出版で、教授曰く、内容が古くなってる部分もあるとのことだったので、本来は、(よく知りませんが)もっと内容が深くまでカバーされている経済学寄りの教科書を読んだ方がいいのかもしれません。政治学 or IRを題材にした新しいゲーム理論の教科書(ゲーム理論を題材にした政治学 or IRの教科書ではない)があれば良いのですが、寡聞にしてあまり知りません。

 

授業は毎回教科書のチャプターを読んできて、その単元について解説+先生が付け加えたい内容を話すという感じです。毎週、problem set が課されており、後半になると半日は時間がかかるくらいの難易度でした。

 

あと、教授のPerfect Bayesian Equilibrium の解説が少しわかりにくかったのですが、その際はこのYoutubeを見て理解してました。厳密に正しいのかはよくわかりませんが、少なくともざっくりと理解するのには有用でした。(一応、解説してるのはWilliam Spanielというピッツバーグ大の助教授の方です。)

www.youtube.com

 

一応、中間試験があるはずだったのですが、2月にあったテキサス大停電のせいで吹き飛びました。5月の最終課題は自分で考えたモデルを出す(必ずしも解かなくても良い)というものだったのですが、その時自分が出したアイディアが教授曰く割とよかったらしく、publishableだと言われたのでとても嬉しかったです。このアイディアに時間をかける価値があるとのことなので現在それに(他のものと並行して)取り組んでいるのですが、まだあんまり進捗が出てないです。。汗

 

次学期にFormal Theory ll が開講されるので、その最終課題としてもこのプロジェクトを取り扱い、更に進めようかなと考えています。

 

②Statistics ll

統計の授業で、先生は変わりましたが前学期から引き継ぎで行われれる授業です。主に回帰分析について扱い、回帰分析にはどんな仮定が必要か、仮定が満たされているかどのようにチェックすれば良いか(いわゆる回帰診断)といった内容でした。他にも重回帰分析を関数を使わずにスクラッチで行う練習をしたり、変数の適切な変換方法やどんな測定誤差がどんな問題として出てくるのかといった内容も扱いました。

 

Wooldridgeが教科書として指定されたのですが、授業内ではあまり参考にしてませんでした。授業は週2回、各1時間半の長さで、先生がその週の内容を解説して2週間に1回課題が出てるので、それを解いていくという感じでした。この課題がかなり大変で、解くのに丸一日以上、もしかしたら2日くらいかけてました。せっかくなので、学んだ内容をまとめたいなと思っているのですが、筆無精がでてしまい全く進めておりません。

 

最終課題はOLSを使った論文をレプリケーションして独自の分析を付け足す、というものでした。追加分析のパートで僕は今井先生のパネルデータにおける因果推論に関するworking paperで提唱されている手法を別の問題にアプライしたのですが、この論文かなり面白かったので興味のある方はチェックしてみると良いかもです。

Matching Methods for Causal Inference with Time-Series Cross-Sectional Data

(関連する論文としてはImai and Kim (2019)やImai and Kim (2020)などがあり、これらに関する日本語の解説として東京大学社会科学研究所『社会科学研究』第72巻第2号 社会科学の実証的方法論: データと統計分析の観点からがあります。)

 

最終課題で提出した内容では論文は書けないと思いますが、素人目線なもののこの手法自体はかなり有望な気がするので、他の問題にも当てはめられないかなあとなんとなく思っております。

 

③Experimental Method

実験について学ぶ授業でした。この授業は結構特徴的で、授業内で実際に実験をしながら学ぶと言った感じの授業です。学部から資金が割り当てられており、500人くらいのサンプルサイズの実験を実際にしてそれを最終ペーパーとして書く、という内容でした。毎回の授業では論文がアサインされており、ラボ実験、サーベイ実験、外的妥当性、研究倫理(特にIRBの書き方、提出の仕方)、Qualtricsの使い方といったことについて広く浅く学びました。

 

実際に実験をしながら学ぶのはとても良かったですし、この授業でかなり色々なことは学べたのですが、正直なところ授業内容はもう少し改善できるような気がしました。というのも、なんとなく実験がどんなものでどのように実施すれば良いかは分かったものの、理論的な話が十分に扱われておらず、例えばcausal mediationやbalance check の方法などはしっかり扱われていませんでした。そのため、最終課題で実際に実験した内容でペーパーを書く際にどうやって分析すれば良いか困ってる受講生もいました。また、毎回同じような話ばかりでもう知ってるよと思うようなこともありました。他の大学について調べた訳ではないのですが、実験をたくさんやってるアメリ政治学でも実験の授業は実はそこまで体系化されておらず、超一流大学ならまだしも、多くの大学では各教授がなんとなく教えてるところも多いのかなと、なんとなくですが思いました。(ちなみに、今早稲田で実験の集中授業が行われてると小耳に挟んだのですが、とても良いなと思いました。)

 

最後に近況について

前々回の記事(最初の学期が終了! - 紺青Diary)で日本の時の指導教員にお誘い頂いて、冬休みにある本の翻訳プロジェクトに参加することになったと書いたのですが、それは無事終わらせることができました。実際に出版されることになったらまた報告します。翻訳期間が授業期間と一部被ってしまい、同時平行で進めるのはすこし大変でしたが、このプロジェクトから多くのことを学べましたし大変貴重な経験をさせていただいたと思います。また、日本にいる先生と共著で取り組んでいた論文もほぼ完成し、あとは少し直して、英文校正にかけて、submitするだけの段階になりました。

 

今の段階で、上記とは別に、単著プロジェクトを2つと別の共著プロジェクトを1つ抱えているので、完全に手が塞がっている状態です。実際、個人プロジェクトの一つは完全に凍結状態で、どう時間を見つけて進めていこうか考えています。最近それとは別のリサーチクエッションも思いつき、割と面白いかなと思い始めたのですが、流石に同時に手を付けすぎなので、やるプロジェクトはしっかり優先順位をつけてきっちり終わらせないといけないと自分に言い聞かせています。。院生の身分としてはやることが沢山あるのは精神衛生上良いことですが、研究課題があることに安心してしまって夏休みということもあり怠け癖が出てしまう自分と戦ってます。

 

あと、個人的なニュースですが、車の免許を取得し、車も購入しました。免許や車をゲットする段階で色々あり、次のブログの題材にしようかなとも思ったのですが、そこらへんの情報はネットにたくさん転がっているので別に僕が書く必要もないかなと思い見送ることにしました。何か質問等ある人がいればいつでもご連絡ください。車のある生活は自由でとても良いです。

 

それではまた。

 

参考文献

Imai, K., & Kim, I. S. (2019). When should we use unit fixed effects regression models for causal inference with longitudinal data?. American Journal of Political Science, 63(2), 467-490.

Imai, K., & Kim, I. S. (2021). On the use of two-way fixed effects regression models for causal inference with panel data. Political Analysis, 29(3), 405-415.