紺青Diary

国際政治とアメリカ留学

2021年秋学期

新年あけましておめでとうございます。

お久しぶりです。

 

2022年春学期が始まりそうなので(もう始まってしまった)、その前に2021年秋学期と冬休みについてメモがてらまとめておきます。

 

まず研究の方から

 

ステータス関連の共著論文が完成したのでジャーナルに投げています。現在、2つにレジェクトされていて、現在3つ目のジャーナルに挑戦中です。ジャーナルに投稿するのもレビューコメントを貰うのも、そしてレジェクトされるのも初めての経験で、新鮮な気持ちでいます。こんなこと言ったら共著者に怒られるかもしれませんが個人的にはそんなに期待値が高い訳ではないので(どんなにすごい人でも最初からトップジャーナルに乗ってることは少ない気がする)、レジェクトされてもそんなに落ち込まずに、次、次という感じでいます。

 

安保理論文については、この冬休みをつかって分析中です。これまでのコードにミスが発見されて結果が変わってしまったり、新しいトピックモデルを試したり、データを追加していたりするので、思ったより時間がかかってしまっています。今の所、思った結果が微妙な感じでしか出ず、あまりきれいではないので、どうしようという感じです。なんとかなると思ってがんばります。

同盟の負担交渉論文については、とりあえず授業のタームペーパーでいい感じにモデルを組み立てて面白い均衡を見つけることができたのですが、指導教官からはそこまで刺さる感じではなかったようなので、関連文献をもう少し読むのとどう改善するかなと考えていたら、冬休みが終わりそうです。国内政治のモデルを組み込んでもいいのですが複雑な割には面白い結果がでるかわからないので、これもうーんと悩んでます。

 

この他に現在進行中の共著が1つ、アイディアが出ていて共著しようとしている段階なのが2つあります。次の学期も忙しくなりそうですが、共著の方はそこまで意識しなくてもペースができてくるので特に単著の方を早く完成させるという気持ちでいます。これまでの経験上、そうしないと単著の方だけどんどん遅れていってしまうので笑

 

次に授業です。

先学期は4つ取っていました。1つはゲーム論IIです。この授業は先学期のゲーム論の続きで、繰り返しゲームや、マルコフ完全均衡、Cheap Talkなどについて学んで来ました。受講人数は5人でした。ここまで来ると適切な教科書がないためか、毎回論文が指定されそこで使われている手法を学ぶという感じでした。ほぼ毎週problem setが課され、それをクラスメイトと一緒にあーでもないこーでもないと言いながら解いてたのは楽しかったです。また、論文で実際に使われている手法を学ぶのでモチベーションも高く保てました。final paper は同盟の負担交渉について書きました。個人的にまだきちんと理解できてない単元があるので、そこらへんを復習したいなと思っていたのに気づいたら次の学期に入ってしまっていて、早く復習するべきだったと後悔しています。

 

2つ目はInternational Organizationです。この授業はそのまま、国際組織に関して学ぶセミナー形式の授業で、とても面白かったです。受講人数は9人くらいでした。コヘインから始まって、テーマごとに毎週4本か、本1冊と論文2本くらいを読んでました。扱った対象としては、IMFWTO世界銀行から環境条約、人権条約、投資協定まで多岐に及んでました。余談ですが、このクラスの課題3回のうち2回でクラス最高点を出したのでここに記念として書いておきます笑。

サブスタンツの授業はメソッドと比べてそんなに役立たないと言われがちではありますが、論文を書くときに自分の研究を大きなリテラチャーのどこに位置づけるのかや、理論のアイディアをどこから借りてくるのかといった問題に対応しやすくなるのは良い点だと思います。最近聞いて納得したのは、最近はメソッドの教育が発展してきてみんな良いメソッドを使えるようになったからこそ、理論の重要性が増しているということです。IRに特有なのかもしれませんが、なかなか良い自然実験が見つけられないため厳密な因果推論は難しいし、見つかったとしてもあまり面白い発見でないとトップジャーナルは難しいなかで、重要な問いに対し面白い理論+普通の統計(もしかすると記述統計だけでも?)で他と差別化を図るのはあり得る戦略だと思います(例としてはAltoman 2020など、他にもIOには理論メインの論文がたくさん載っています)。もちろん、さらなるメソッドの発展を追求していく方向性も十分アリだと思いますが、個人的には、IRの研究者として生きるためにはメソッドの最先端をある程度抑えるのはもはや当たり前で、そこから理論的に何ができるかが勝負の分かれ目だと思うようになりました。

 

3つめは統計IIIで、これは主にMLE を扱いました。受講人数は10人くらいです。思ったより理論的なことを扱い、またR はほとんど使わず、Mathematicaを使って計算したりしました。理論的すぎるためか他の学生からは割と不評でしたが、個人的には面白かったです。ただ、もう少し応用部分があれば嬉しかったのは間違いないです。あまりに不評過ぎたため、この先生が次の学期に教えるマルチレベル・パネルデータ分析の授業を他の学部(社会学部)で取ろうとする人が続出してました。フィードバックは他の先生よりも丁寧だったため、私はたまに研究の相談に相談に行ってました。

 

4つ目は英語の発音の授業で、これはTAのテストで条件付き合格だったため受けることにしました。本当は受講する必要はなかったのですが、せっかくの英語を向上させる良いチャンスかなと思って受講しました。先生がフレンドリーでかつフィードバックが本当に丁寧でしたし、これまで長年英語を勉強してきたのに知らないことがたくさんあってこの授業は本当に取ってよかったです。R Lの発音をきちんとするところから始まり、シュワサウンドや、文の中でどこを強調しどこを強調しないのかを学びました。その後に受けたTAテストは無事合格しました。これでいつでもTAとして働けます。

 

次の学期に取る授業は、Political Violence, Research in International Politics, ベイズ統計です。Political Violenceは国内暴力を扱い、内戦や抑圧などを扱う予定です。ちょっと読む量が多そうなので今から憂鬱です笑。Research in International Politicsは少し特殊な授業で、各々でペーパーを書いてそれを評価し合ったりIRの先生からコメントをもらうライティングの授業です。おそらく、授業のタームペーパーからパブリケーションまでギャップがるので、それを埋めるために用意された授業だと思います。ベイズ統計は、政治学部ではなく統計学部で開講される授業で、そのままベイズ統計(階層モデルなど)をやります。

 

 

この冬休みの間、研究の他にはサンアントニオに車で観光に行ったり、片道2時間運転してテキサスA&Mで政治学博士課程をしていらっしゃる方に会いに行ったりしていました。テキサスの大地を車運転するのは割と楽しいです。

 

急いで書いたので駄文で申し訳ありません。

それではまた〜

 

参考文献

Altman, D. (2020). The Evolution of Territorial Conquest After 1945 and the Limits of the Territorial Integrity Norm. International Organization, 74(3), 490-522. doi:10.1017/S0020818320000119

 

春学期について

お久しぶりです。全く更新しなくてすいません。季節もすっかり夏になって夏休みも後半になってしまいました。

 

今更ではありますが、春学期の授業について記録がてら何をしたか簡単にまとめておこうかなと思った次第です。

 

春学期にとった授業は三つで、①Formal Theory l、②Statistics ll、③Experimental Method です。国際政治専攻のはずなのにメソッドだらけの学期となりました。

 

①Formal Theory l

ゲーム理論の授業です。教科書は一応 Morrow のGame Theory for Political Scienceを使っていました。例年だと教科書は指定されてなかったそうなんですが、今年はコロナのせいでオンライン開催になり、その際に自分で参照できるものがあると良いという教授の判断でこの教科書が指定されました。ただ、実際のところ授業内容はそこまでこの本に沿ってなかったです笑。Morrowの教科書は1994年の出版で、教授曰く、内容が古くなってる部分もあるとのことだったので、本来は、(よく知りませんが)もっと内容が深くまでカバーされている経済学寄りの教科書を読んだ方がいいのかもしれません。政治学 or IRを題材にした新しいゲーム理論の教科書(ゲーム理論を題材にした政治学 or IRの教科書ではない)があれば良いのですが、寡聞にしてあまり知りません。

 

授業は毎回教科書のチャプターを読んできて、その単元について解説+先生が付け加えたい内容を話すという感じです。毎週、problem set が課されており、後半になると半日は時間がかかるくらいの難易度でした。

 

あと、教授のPerfect Bayesian Equilibrium の解説が少しわかりにくかったのですが、その際はこのYoutubeを見て理解してました。厳密に正しいのかはよくわかりませんが、少なくともざっくりと理解するのには有用でした。(一応、解説してるのはWilliam Spanielというピッツバーグ大の助教授の方です。)

www.youtube.com

 

一応、中間試験があるはずだったのですが、2月にあったテキサス大停電のせいで吹き飛びました。5月の最終課題は自分で考えたモデルを出す(必ずしも解かなくても良い)というものだったのですが、その時自分が出したアイディアが教授曰く割とよかったらしく、publishableだと言われたのでとても嬉しかったです。このアイディアに時間をかける価値があるとのことなので現在それに(他のものと並行して)取り組んでいるのですが、まだあんまり進捗が出てないです。。汗

 

次学期にFormal Theory ll が開講されるので、その最終課題としてもこのプロジェクトを取り扱い、更に進めようかなと考えています。

 

②Statistics ll

統計の授業で、先生は変わりましたが前学期から引き継ぎで行われれる授業です。主に回帰分析について扱い、回帰分析にはどんな仮定が必要か、仮定が満たされているかどのようにチェックすれば良いか(いわゆる回帰診断)といった内容でした。他にも重回帰分析を関数を使わずにスクラッチで行う練習をしたり、変数の適切な変換方法やどんな測定誤差がどんな問題として出てくるのかといった内容も扱いました。

 

Wooldridgeが教科書として指定されたのですが、授業内ではあまり参考にしてませんでした。授業は週2回、各1時間半の長さで、先生がその週の内容を解説して2週間に1回課題が出てるので、それを解いていくという感じでした。この課題がかなり大変で、解くのに丸一日以上、もしかしたら2日くらいかけてました。せっかくなので、学んだ内容をまとめたいなと思っているのですが、筆無精がでてしまい全く進めておりません。

 

最終課題はOLSを使った論文をレプリケーションして独自の分析を付け足す、というものでした。追加分析のパートで僕は今井先生のパネルデータにおける因果推論に関するworking paperで提唱されている手法を別の問題にアプライしたのですが、この論文かなり面白かったので興味のある方はチェックしてみると良いかもです。

Matching Methods for Causal Inference with Time-Series Cross-Sectional Data

(関連する論文としてはImai and Kim (2019)やImai and Kim (2020)などがあり、これらに関する日本語の解説として東京大学社会科学研究所『社会科学研究』第72巻第2号 社会科学の実証的方法論: データと統計分析の観点からがあります。)

 

最終課題で提出した内容では論文は書けないと思いますが、素人目線なもののこの手法自体はかなり有望な気がするので、他の問題にも当てはめられないかなあとなんとなく思っております。

 

③Experimental Method

実験について学ぶ授業でした。この授業は結構特徴的で、授業内で実際に実験をしながら学ぶと言った感じの授業です。学部から資金が割り当てられており、500人くらいのサンプルサイズの実験を実際にしてそれを最終ペーパーとして書く、という内容でした。毎回の授業では論文がアサインされており、ラボ実験、サーベイ実験、外的妥当性、研究倫理(特にIRBの書き方、提出の仕方)、Qualtricsの使い方といったことについて広く浅く学びました。

 

実際に実験をしながら学ぶのはとても良かったですし、この授業でかなり色々なことは学べたのですが、正直なところ授業内容はもう少し改善できるような気がしました。というのも、なんとなく実験がどんなものでどのように実施すれば良いかは分かったものの、理論的な話が十分に扱われておらず、例えばcausal mediationやbalance check の方法などはしっかり扱われていませんでした。そのため、最終課題で実際に実験した内容でペーパーを書く際にどうやって分析すれば良いか困ってる受講生もいました。また、毎回同じような話ばかりでもう知ってるよと思うようなこともありました。他の大学について調べた訳ではないのですが、実験をたくさんやってるアメリ政治学でも実験の授業は実はそこまで体系化されておらず、超一流大学ならまだしも、多くの大学では各教授がなんとなく教えてるところも多いのかなと、なんとなくですが思いました。(ちなみに、今早稲田で実験の集中授業が行われてると小耳に挟んだのですが、とても良いなと思いました。)

 

最後に近況について

前々回の記事(最初の学期が終了! - 紺青Diary)で日本の時の指導教員にお誘い頂いて、冬休みにある本の翻訳プロジェクトに参加することになったと書いたのですが、それは無事終わらせることができました。実際に出版されることになったらまた報告します。翻訳期間が授業期間と一部被ってしまい、同時平行で進めるのはすこし大変でしたが、このプロジェクトから多くのことを学べましたし大変貴重な経験をさせていただいたと思います。また、日本にいる先生と共著で取り組んでいた論文もほぼ完成し、あとは少し直して、英文校正にかけて、submitするだけの段階になりました。

 

今の段階で、上記とは別に、単著プロジェクトを2つと別の共著プロジェクトを1つ抱えているので、完全に手が塞がっている状態です。実際、個人プロジェクトの一つは完全に凍結状態で、どう時間を見つけて進めていこうか考えています。最近それとは別のリサーチクエッションも思いつき、割と面白いかなと思い始めたのですが、流石に同時に手を付けすぎなので、やるプロジェクトはしっかり優先順位をつけてきっちり終わらせないといけないと自分に言い聞かせています。。院生の身分としてはやることが沢山あるのは精神衛生上良いことですが、研究課題があることに安心してしまって夏休みということもあり怠け癖が出てしまう自分と戦ってます。

 

あと、個人的なニュースですが、車の免許を取得し、車も購入しました。免許や車をゲットする段階で色々あり、次のブログの題材にしようかなとも思ったのですが、そこらへんの情報はネットにたくさん転がっているので別に僕が書く必要もないかなと思い見送ることにしました。何か質問等ある人がいればいつでもご連絡ください。車のある生活は自由でとても良いです。

 

それではまた。

 

参考文献

Imai, K., & Kim, I. S. (2019). When should we use unit fixed effects regression models for causal inference with longitudinal data?. American Journal of Political Science, 63(2), 467-490.

Imai, K., & Kim, I. S. (2021). On the use of two-way fixed effects regression models for causal inference with panel data. Political Analysis, 29(3), 405-415.

 

テキサスでの新生活開始

先日渡米したのでその報告と、家が決まったのでその紹介をしようかなと思います。

 

渡米について

アメリカに渡ること自体は特に入国制限などもなくそんな大変じゃなかったのですが、飛行機の確保ですこしバタバタしました。最初はアシアナ航空の7万円台の航空券があって、破格の値段だし特にこだわりもなかったのでそれを予約してたのですが、買ったすぐ後に大韓航空との合併の話が持ち上がり、その後その航空券事態がキャンセルになってしまいました。(ちなみにそのキャンセル料はまだ帰ってきていません。。)

そこで次の便を探したところ、見つかったのが13-4万円で太平洋を渡っていく便と、10万円代で大阪>東京>フランクフルト>シカゴ>オースティンという地球を反対周りに回る航空券でした。どっちにしようか迷ったのですが、数万円の差は大きいと思って、後者を選びました。

よくSNSではガラガラの機内や空港の写真が話題になっていますが、僕が乗った限りでは、特にそんな子ことも感じず、だいたい2/3~4/5くらいの席の埋まり具合でした。(まあ大きく減便などはしてると思いますが。)

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家について
家は大学が提供しているアパートメントに入ることになりました。コロナのせいで秋学期の初めは募集していなかったそうなのですが、11月ごろには応募できるようになっていて、応募してみたらとんとん拍子で入居が決まりました。

このアパート、実は例年なら応募から数年は待たないと入れないようですし、今はそんなでもないですが数年前まで相当家賃が安かったみたい(今は部屋にもよりますが$500〜630くらい)なので、PhDの学生が多く住むそうです。しかも、今はコロナのおかげで二人部屋(bedroom2つ、共有のリビング、キッチンとbathroom)を一人で、家賃も一人分で使えるみたいなので、めっちゃラッキーという感じです。

入居した感じとしては、日本の感覚だと大学とスーパーから少し遠いのが玉に瑕ですが、住み心地は良く気に入りそうな感じがしています。

 

 

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家具について
部屋には最初何もついていませんでした。当初は渡米してから買おうと考えていたのですが、慣れない地でレンタカーを借りてIKEAまでいくのはしんどいと思い、ネット販売で済ますことにしました。IKEAにネット販売をやっていたのでそこで買おうと思ったのですが、なぜか持っているクレジットカードでは購入がうまくいかなかったので、結局Amazonで揃えました。日本にいながらアメリカの物が買え、まだ住んでいない住所に送って貰えるなんて便利な世の中になったものです。これも事前に家が決まり住所がわかってたからこそできたことなので、大学のアパートに入れてよかったなと思うところです。

 

 

 

Austinでの生活について

Everything is bigger in Texasという言葉がありますが、本当にそのとうりでした。特に日本の感覚で地図で見てて、意外と近いなあと思ってた距離が実際歩くと30分みたいなこととかザラです笑。大学が運営するシャトルバスが走っている間はアパートメントの目の前までバスが来るので楽ですが、今学期はほとんどの授業がオンラインということで走らないそうです。それで移動など大丈夫なのかは分かりませんが、家を出る用事もほとんどないし最悪Uberがあるのでそれ使えばいいかなと思っています。

また、先日IRの同級生3人でTexMex(メキシコ料理をテキサス風にした料理でとてもおいしい)を食べに行って、テキサス州の会議事堂を観に行きました。ワシントンでトランプサポーターによる下院襲撃があったせいか、州兵が周囲を取り囲んで警戒していました。

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 余談ですが、こちらに来て数日後に雪が降りました。オースティンはだいたい北緯30度なので日本だと屋久島と同じくらいです。聞いた話ですがオースティンに雪が降るのは3年ぶりくらいだそうです。その他の日は最高気温20度弱、最低気温5〜10度程度の日々が続いているので非常に快適です。

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明日から春学期が始まります。また大変な日々に戻りますが頑張ってきます。

 

 

 

最初の学期が終了!

こんにちは、お久しぶりです。

 

無事1年目の秋学期が終わったので、近況報告しようかなと思います。

 

まず、授業について

今学期は統計Ⅰ、Scope and Method, IR Coreの三つ取ってて、一年目の学生はだいたい似たような授業を取ります。実際、IRの同級生3人とも全く同じ授業をとっていました。時差のあるオンライン授業は夜中の3時から授業が始まったりするので、たまにすごい眠い時とかありましたが、家族の支えもありなんとか乗り越えられました。一応、個人的に気をつけたポイントとしては、ただでさえ下手な英語がより聞き取りづらくなるのを避けるためマイクを少し良いものにしておくのと、日中、日光のせいで寝れない時のためにアイマスクを用意しておいたことです。(実際、アイマスクは効果絶大でしたし、マイクは日本人相手ですが音質を褒められました。)

 

統計は、そのまんま統計の初級って感じの授業でした。実はちゃんとした統計の授業を受けるのはこれが初めてなので、標準的な統計の授業がどんなものか経験したことはないのですが。内容は確率論や集合論から始まって、点・区間推定、そして回帰分析までいきました。毎週課題があって同級生とその答え合わせをする会が開かれていたのと、授業以外にもdiscussion sectionという上級生が毎週1時間、授業内容を解説する会がありました。中盤を過ぎてからは課題はだんだん難しくなってきましたが、まあ良い点は取れてるんじゃないかなと思います。余談ですが、これを教えている先生がこの前Political Analysisに論文出してて、こんな優秀な先生からこんな基礎的な話を学んでいてリソースの使い方として良いのだろうかという気になりました笑。

 

Scope and Methodは政治学の各方面のメソッドを広く浅く学ぶ(というか触る)授業で、研究倫理とかIRBとかにも軽く触れます。毎週論文5本もしくは本1冊を読んできて、先生が解説、議論するみたいな感じです。印象に残っているのは、定性的手法の紹介の回で、再現性を高めるために定量的分野で行われているreplication data/ codeの公開(ハーバードのデータバースが有名ですね)と同様のことを定性的研究でも行おうと、シラキューソ大学で定性的手法を用いた論文の中で引用した資料を公開する試みがあるらしいことです(URLはおそらくこれですThe Qualitative Data Repository | Qualitative Data Repository)。定性研究のことは全然詳しくないのですが、これで定性研究の内容の追試が楽になるのではという気がしますし、詳しくない分野のことを知れるのは楽しいです。

 

IR Coreは国際政治専攻の人には必修の授業で、ゼミ正式でした。毎週論文を5-7本か、本一冊読んできて話すという感じなのですが、前々から聞いていた通り、大量に読まされるなと思いました。特に、実証的な論文ならそこまで細かいところまで読まなくても一応議論できると思うのですが、指定される論文は理論的なものが多く、使われている英語も難しめで趣旨を掴むのにも時間がかかるため、この授業が一番大変でした。理論といっても日本でよくあるようなパラダイムごとに捉える・教えるやり方とは違った(まあそういう要素もあったのですが)、別の視点を提供してて、自分の中の理論の位置付けや見方が多少変わった気がします。

 

ちなみに、来学期の取る授業としては、統計Ⅱ、ゲーム論、実験の三つになる予定です。三つともメソッドというメソッド祭りになってしまいますが、これがアメリカの大学院でやりたかったことなのでとても満足しています。

 

研究について

現在二つの研究を進めています。一つはある先生との共著で国家のステータス認識に関する研究、もう一つは単著で国連関連の話をテキスト分析×因果推論みたいな感じでやってます。後者に関してはとりあえずの進み具合を11月7日に若手研究者フォーラムでライトニング報告させていただきました。フォーラムはその後の交流会も含めとても楽しかったです。企画してくださった先生方、ありがとうございます。

 

研究は短い冬休みの間にできるところまで進めて早く投稿できる形まで持っていきたいと思いつつも、最近、とてもありがたいことに一橋時代の指導教官からある本を翻訳するプロジェクトに参加しないかと声をかけて頂き、非常に良い機会なので、冬休みの間はそっちの方に参加しようかなと考えています。共著の方の進捗を落とすわけにはいかないので、単著の方の進み具合が遅くなる気がします。その単著の研究は若手フォーラムである先生から早く仕上げた方が良いと言われたやつなので、大丈夫かなとそわそわする気持ちはありますが、時間も自分の能力も有限なので出来ることを出来るうちに淡々やっておこうと思います。

 

実は最近もう一つやりたい実験が最近出てきたのですが、これは来学期の実験の授業のタームペーパーにしようかなと考えています。

 

来学期について

最後に、JASSOの規定が変わったおかげで、来学期から渡米できることになりました。家も既に決まっています。これについてはまた記事を書こうかなと思います。

他にもUT Ausitnがメソッド系の人を来年から採用するのですが、そのプロセスが面白かったのでそれについても書いてみたいなと思いつつ、如何せん筆不精なため結局書かない気がしています笑。

 

それではまた。

 (12月17日に誤字等を修正しました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ大学院挑戦記(5)出願先決定とwaitlistに乗った後の対応まで

こんにちは、前回は奨学金について書きました。

今回は出願先決定について簡単に述べた後、waitlistに乗った後の対応をまとめて書いてしまいます。また、このシリーズは今回で最後にしようと思います。本当はもっと書くつもりだったんですが、気乗りするタイミングを待っていたらもう学期が始まる直前になってしまっていて、あまり書く時間がないというなんとも情けない形になりました。

 

・出願先の決定

まず、出願先の決定に関しては、興味が合致し、かつ、他大学に移籍しなさそうな教授が複数いることだったり、街との相性だったり、US Newsのランキングを参考にしようだったりというのは他のブログでも述べられていると思いますが、私もそれらを参考にして出願先を決めました。夏くらいから各大学のホームページを見始めて、情報をまとめ出しましたが、各大学の教授の業績を見たりするのはモチベーションも上がりますし、どの大学にどんな教授がいるのかについて知識が増えるので非常に参考になりました。また、この過程を経て、有名大学だからといって興味があう人ばかりじゃないし、特定の分野に限ってはいわゆるランクが逆転する場合も多々あるということが実感できました。以下は当時作成していたスプレッドシートのスクショです。こんな感じにまとめてたよという感じで参考になれば嬉しいです。(忘れていましたが、UT Austinに優先度で1位、コメントでvery very goodと書いてあるのを見つけて最初から関心は合っていたんだなと思いました。)

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私がここの段階で悩んだのは、一体どれくらいまで出願先を増やすのかという問題です。結論としてはPhDには11校、マスターには4校、計15校出願したのですが、特にPhDに関してはもう少し増やそうか悩みました。前の記事でも言った通り、申請書類は共通しているため出願先を増やすのは手間的にはそれほど大きな負担ではありません。また、出願先を増やせば増やすほどどこかに引っかかる可能性は高くなる気はします。一方で、出願には1校につき約8千円〜1万5千円のお金がかかることや、急に申請校を増やした場合の推薦者への負担などを考えると、無闇に増やすのは得策ではなさそうです。私の場合、今年ダメだったら来年も再挑戦する予定だったので、あまり滑り止め的な感覚で増やすのはよくないと思い、また、金銭的な制約もあったので、US NewsでTop30以下の大学はとりあえず出願先から外すことにしました。

 

また、Masterに関しては指導教官からあまり全落ちするものではないので、数校で大丈夫だということだったので4校に出願しました。マスターの場合注意が必要なのは、政治学周りのマスターコースというと公共政策大学院が圧倒的に多く、Political Sciencene学部に直属するリサーチ型のマスター(正確な呼称ではないかもですが、他に呼び方を知らないのでここではこう呼びます。)をおいている大学は少ないということです。もちろん、公共政策大学院でも十分研究ができるところはあると思いますが、掲げている看板が実務家養成なので不安は残ります。その点、PhDへのステップとしてリサーチ型のマスターを置いている大学は比較的安心できる気がしました。例えば、New York UnniversityやColumbia Universityなどがあるかなと思います。ただ、この点に関しては情報が非常に少なく、ここで述べていることも推察の域を出ないので注意してください。また、どの大学がリサーチ型のマスターを置いているかをまとめて調べるのは難しく、既存の検索サイトは広告などで汚染されてるので、直接大学のサイトに行って調べてました。

 

・出願後

出願したら、あとは結果を待つだけなのですが、大体1月末くらいから結果が出始めます。それまでの間に、書類の不手際やOhio Stateからオンライン面接の連絡が来たりしました。また、その頃は、GradCafeとよばれる匿名掲示板に入り浸って他人の(真偽の不確かな)情報を漁ってました。そして、2月1日の午前4時頃にUT Austinからwaitlistに載った連絡が来て(なぜかその時間に起きてました)、飛び上がったのを覚えています。何しろwaitlistに残るだけで奇跡的だったので。最初の頃は結果が来てドキドキし不合格になると一丁前に落ち込んだりするのですが、その後はあまりに不合格が続くのでだんだん新しいメールが来てもまた不合格だろという感じになっていました(し、実際いくつかのマスター以外は不合格でした)。

 

・waitlistに載った後の対応

ここではwaitlistに載った後の対応について簡単に残しておこうと思います。注意点としては、他の大学のwaitlistに載った経験がないのでここに書くことが他でも当てはまるわけではないこと、これをやったから最終的に合格したのかと言われると怪しいということでしょうか。

 

waitlistに載ったメールにVisit Day(各大学が合格させた生徒を呼び、実際に交流しながらその良さの大学を伝えるイベント)へのお誘いが載っていたので、各方面に相談したのちに参加することにしました。指導教官によると、既にwaitlist内での順位は決まっているので今から何もできることはないとのことでしたが、アメリカの大学にふれる良い機会でしたし、頼んだら航空券代も全額大学持ちにしてくれたので、参加して損はないと思いました。

 

Visit Day自体は3月の初旬に行われました。ちょうどコロナがで始めた頃だったので、これより後に予定を組んでいた大学ではVisit Dayができなかったところもあったようです。またその頃、JASSOの奨学金の結果も出たので、奨学金をもらえることを先方に伝えました。

 

Visit Dayはとても楽しかったです。普段経験しないようなアメリカのパーティーを経験できたり、有名な研究成果を出した教授が目の前にいたりするので、楽しくないわけがありません。院生によるポスターセッションもあって刺激にもなりましたし、実際に話すことで教授・院生の人柄の良さも実感としてわかりました。また、合格の可能性を少しでも上げるために、Visit Day前から各教授の論文に簡単に目を通しておき、一対一で話せる機会に教授に積極的に質問をするようにしました。その過程でIR分野の合格者を決めている教授を知ったので、VIsit Day終了後すぐに、進学する意思があること、そして再度奨学金を持っていることを伝えました。

 

帰国後、何度か結果はまだかという連絡をした後、4月の初旬にwaitlistからの繰り上げ合格の連絡を受けました。メールを見た瞬間、思わず「やったー!!」という声をあげたこと、そして、早朝だったにもかかわらず嬉しすぎて親にすぐさま電話をしたのを覚えています。確か4月15日まで大学側から決定を催促してはいけないという大学間で取り決められているルールがあり、通常の合格の場合でもその日までに入学するかどうかの決定を求められます。逆に言えば、waitlistに載った人にはその日までには連絡が行く場合が多いのかなと想像します。

 

以上、waitlistに載った後のことを書いて来ました。個人的にはwaitlist に載った後のVisit Dayには絶対行ったほうがいいと思います。少しめんどくさい気持ちもわかりますが、行ってみると純粋に楽しいですし、もし繰り上げ合格しそこに進学したらそこで5年間以上過ごす可能性があるわけですから、人や場所が合うかどうかを見極め絶好のチャンスだと思います。また、(先ほどの指導教官と言ってることが逆になってしまいますが)Visit Dayに行くことで繰り上げ合格の可能性が上がることもないわけではないとは思います。というのも、合格後に過去に教授とUT Austinの在学生とのやり取りをみる機会がたまたまあったのですが、そこではコホートの男女比やcoloredの人が入っているかといった点を気にしていました。ということは、waitlistの中である程度の順位は既に決まっていたとしても、教授の裁量で特定の人をpick upする可能性がないわけではないわけで、その点Visit Dayに参加して教授に良い印象を残しておくことは悪くない戦略だと思います。

 

これでこのシリーズはいったん終わりです。駄文にもかかわらず辛抱してここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。また質問等あればお気軽にどうぞ。

 

 

 

 

 

アメリカ大学院挑戦記(4)奨学金について

前回は申請書類について書きました。今回は奨学金についてです。前回の記事を書いた後、連続して書いてるので、この記事はさらっと終わらすと思います。

 

私の場合、PhDに受かる可能性は非常に低いと思っていたため、海外の修士課程に進学することを念頭に置いていました。そしてその場合、莫大な学費がかかるため奨学金は何がなんでも取らないといけないという状況でした。アメリカのPhDだと学費・生活費はかからず、奨学金の獲得は必須ではないため、修士を併願することで生じた通常の米国PhD挑戦とは異なる点だと思います。

 

また、私の専門分野だと応募できるところが少なく(民間奨学金の多くは理系・経済分野を念頭に置いている)、学部生だと出願できないという制約があるもの(経団連、吉田育英、フルブライト等)もあったため応募できる奨学金を探すのに苦労しました。

 

その上で私が受験したのは、JASSO、伊藤国際教育財団、平和中島財団、村田海外留学奨学金、ロータリー財団です。結果としては、JASSOは合格、村田は書類審査、一次面接通過後、最終面接落ち、ロータリーは書類審査通過後、一次面接落ち、伊藤国際と平和中島は書類審査落ちでした。JASSO以外の奨学金は数人〜10人少しの合格に対し、数百人が応募するという競争率で、かつ他分野の人との競争になるため個人的には合格しなかったという結果に納得はしています。

 

とりあえず、出願資格があるなら多少条件が悪くても手当たり次第出したという感じです。個々の奨学金について書いていきますが、細かい条件などは書かないのでご自分で確認してください。ここではあまり表面に出てこない実際に受けた感想などについて書いていけたらいいなと思います。また、落ちた財団についての記述はあくまでも落ちた人が書いている内容だということ(つまり、自分が進んだところ以上のことはわからないし、その内容は無意識的に悪く脚色されている可能性があるということ)をご留意ください。

 

・JASSO

JASSOについて書いていたら公開するのに適切な文体ではなくなってしまったので(かつ適切な文章にするのに大きな労力がかかるので)省略します。少々準備が大変ですが、競争率は他の民間奨学金より低いので、他の奨学金が全落ちしたときに備え出願するのは悪い戦略ではないと思います。また、面接官には専門の先生が含まれて、割と鋭い質問も飛んできますし、申請書もアカデミックな観点から見られている感触がしたので、その点は注意した方がいいかもしれないです。

 

・村田海外留学奨学金

最終面接で落とされましたが、非常に印象が良い財団です。申請書類も大変ではなく、京都で行われる面接の交通費も毎回全額支給してくださりました。(例えばJASSOの場合、少なくとも私のところには交通費について何も連絡はありませんでした。地方からの出願者は自腹だったのでしょうか...?)また、面接の際、出会えた人たちとは意気投合して今でもオンライン飲み会などをしています。

最終面接での簡単な反省点としては、他分野の人と競争する際、専門的な知識では差がつきにくいので、社会をどう良くするかについてビックピクチャーを持っていくこと、そして他分野の人にもわかりやすい説明を心がけることです。ちなみに、村田の募集要項では政治学は募集対象外なのですが、法律が募集対象になっていました。関連分野なら割と広く受け付けてくれるそうなので、この奨学金のために国内法と国際政治に関わる研究計画を新しく作って申請しました。

 

・ロータリー財団

ホームページからではあまり実態がわからない財団です。全国を地区に分けそれぞれがそれぞれの地区を担当しているという感じなのですが(間違っていたらごめんなさい)、自分が住んでいる地区を探してそこに電話をかけると奨学金の申請方法とか色々教えてもらえると思います。ただ、個人的にはここは応募しなくてよかったなと感じてる財団です。というのも、あくまで印象論ですが、支援内容や面接での雰囲気として、海外の修士課程に出願するNGOなどで働く実務家を支援することを主にしているのかなという感じで、あまりアカデミックな雰囲気を感じず、自分が落ちるのも納得だし、仮に一次面接を通過したとしてもその後落ちてただろうなと感じたからです。もう少しホームページからわかる情報が増えれば、このようなミスマッチも防げるのではないかなと思います。

 

・伊藤国際教育財団

昨年の誕生日とその前日を返上して申請書を書いた思い出がある財団です。申請書自体は割と大変で、書いても書いても終わらずマクドで夜中まで書いていました。書類審査で落ちたのでこれ以上特に書くことはないのですが、一点加えるならもう少し申請書の量は少なくてもよかったのではという気はします。落ちた後の虚しさが半端ないです笑。

 

・平和中島財団

こちらは打って変わって、申請書が非常に簡素でした。(確かA4で1-2枚でした。)申請書が簡素だと申請する瞬間は楽で嬉しかったのですが(当時は英語の試験対策や授業で忙しかった)、後から考えるとあれでちゃんと数百人の応募者をふるいにかけられているのかは気になりました。もしかしたら、こちらが書く申請文以外の判断材料が大きいにかもしれません。

 

今回は以上です。当時は何がなんでも奨学金に受からなければ後がないという感じだったので、手間や競争率を考えたらあれはいらなかったなというのもまあまああります。まあ全ては結果論なんですが。ただ、内定して思うことですがJASSOの奨学金は色々と融通が効かない印象があるので、特に今回のコロナのことも考えると、民間の奨学金を取れるなら取っておいたほうが良いとは思います。

 

次回は出願校の決め方とwaitlistになったときの対応について書いていきます。

 

 

 

アメリカ大学院挑戦記(3)申請書類について(SOP、スコア、Writing Sample、推薦状)

こんにちは、第3回目の記事です。前回の記事はこちらから。

 

今回は、大学に提出する申請書類についてです。記憶があやふやな部分もあるのですが、これ以上忘れないうちに書き上げておきます。

 

まず最初に、あまり詳しくない友人などによく質問されることなのですが、アメリカの大学院は日本と違い書類審査のみなので、基本的には合否は提出した書類の内容のみで決定されることになります。また、提出書類は基本的に各大学共通しているので、受験する大学院を増やすことはあまり負担増になりません。

 

提出する書類としては、主にStatement of Purpose(SOP)、GRETOEFLのスコア、Writing Sample、推薦状3枚、GPAと成績証明書(履修表)があると思いますが、この中でもSOPと推薦状が特に重要だと聞きます。以下、自分がどんなことを考えて各書類を準備したのか書いていきます。

 

・SOP

大学でどんな研究をしたいか、それはなぜか、そのためにどんなことをしてきたか、なぜその大学に応募したのかを書く書類で、日本で言うと志願書と研究計画書が合わさった書類にあたると思います。大体レターサイズで2-3枚くらいの長さですが、大学によって細かい規程があり、指定される文字数が違っていたり、ダブルスペースかどうかみたいな違いがあります。また、SOPという名前ではなくStatement of Academic Purposeという名前だったりする場合もありました。私は11月から書き始めましたが、出願書類の中でも特に重要な書類なのでもっと早くから書き始め、もっと練りに練るべきだったと多少後悔しています。また、最初はSOPと言われても何を書いたらわからないと思うので、他の人に見てもらったり、先輩の書類を見せてみると良いと思います。また、一度書いたSOPについては様々な人に見てもらい改善を重ねることが重要だと思います。

私の場合、ある有名なアメリカで教えている先生が東大で行った出張授業に参加した(潜らせてもらった)際、その授業にいたアメリカの大学院に進学する/している先輩方に頼んで、実際に書いたSOPを見せてもらいました。また、指導教官の先輩や英語ネイティブの友人に書いたものを見てもらい、何回も直してもらいました。個人的には、SOPは研究計画書と志願書を兼ねるためか、通常日本で書くような研究計画書のように先行研究の整理や自分の問い等にどう答えるかだけでなく、それらと大学への志望理由やこれまでの取り組みを結び付ける形で書くのが新鮮かつ慣れない点でした。また、後述するように英語の点数が不安だったので、その言い訳(時間がなかった等)を書きました。また、最後に英文校正サービスを使いました。

 

GRETOEFLのスコア

大体の点数のレンジについては既に記載しましたが、再度記載します。

TOEFL 100−105/ 120

GRE  Verval 145−150/ 170

    Math 165−170/ 170

    Writing  3.0-4.0/ 6.0

 

TOEFLは本来は春までにはとっておくべきものですが、最終的に100点を超えたのは9月になってからで4回目の受験でした。(対策自体は1月から開始していました。)多くの大学では申請条件として100点を基準にしており、これをギリギリ超えただけでは申請者の中では最低点近くになってしまいます。研究を英語で行うことを考えると100点ギリギリというのは心許ないですし、何より大学側から見たときこの生徒は博士課程を最後まで生き残れるかという不安要素が強くなってしまいます。なので、私が言えたことではありませんがより点数をとるべきだと感じますし、私の点数では十分ではないと思います。英語は昔から苦手だったのですが、これからも悩まされると思います。

 

また、GREについては夏くらいから対策を開始し、9月に1回目、10月に2回目を受けました。結果は納得できる点数ではありませんでしたが(特にVerval とWriting)、受験料の高さや時間のなさなどからやむなく受験を終了しました。海外からの留学生だと専門にもよりますが、あまりVervalとWritingは見られないという噂も聞きます。特に私の場合は計量を専門にする予定だったので、あまり英語力については見られなかったのかもしれません。また、大学によってこれらの点数を重視するかどうかは変わるという(真偽がわからない)噂も聞きますし、他の要素も含め総合的に判断される(と思う)ので、点数が低いからといって常に自動的にアウトになるわけでもないと思います。一方で、(当たり前ですが)これらの点数は高いことに越したことはなく、ある有名トップスクールの先生によると、TOEFLGREはほぼ満点近くとってくるのは当たり前で、そこからSOPや推薦状の勝負になるという趣旨のことをおっしゃっていました。なので、合格の可能性を少しでも上げるためにも良い点をとっておくのは重要だと思いますし、競争率の高いトップスクールへの合格を目指すならGREで見劣りしないというのは尚更重要だと思います。悩ましいのは、人がかけられるリソースは(常に)限られていることで、私のような非ネイティブにとってはGREのverval, writingで良い点をとるためにはかなりのリソースを投入する必要があることに鑑みても、どのくらいの点数で妥協するかは難しいところだと思います。一応の目安等を知りたい方は他のブログを参考にしてください。

 

・Writing Sample

自分の研究を論文形式で提出します。私は卒論を英訳したものを提出しました。また、英訳に際してSOP同様、英文校正サービスを使いました(が、当時利用したところはあまりクオリティーが高くなかったのではと思っています、お金はケチらない方がいいです笑)。分量や形式については大学によって違いがあるのですが、大体20-25ページを上限にしているところが多かった印象です。また、細かな点ではありますが、研究を開始する基礎力があることを示すために(特に私は計量とゲームをやりたいと言っていたので)、書く際にはLaTeXを使って数式を綺麗に出力したり、係数の表を出す際にはRのstargazerパッケージを使ったりと、ぱっと見で研究に必要なスキルが備わっている雰囲気を(成功しているかは置いておいて)醸し出すようにしました。 

もっとも、このWriting Sampleに関しては、どう考えてもcommittee側に全員分を細かくみる時間はなさそうなので、ある程度選定した後の絞り込みや、最後の数人を決める際に使うのではないかと想像しています。

 

 

・推薦状3枚

先ほども書きましたが、推薦状は非常に重要だと言われています。アメリカでは(日本でも)大学によって学生の能力に差があるためGPAは参考になっても必ずしも絶対の指標ではありませんし、また、GREなどのテスト結果は研究能力といつも比例するとは限りません。その中で、伝統的に推薦状という制度が学生の能力を評価する手段になっているのだと思います。

推薦状で重要なのは誰に書いてもらうか、そして、どんな内容なのかだと思います。海外院を目指す学生なら専門の授業で良い成績をとることはそこまで難しいことではないと思うため、良い内容を書いてもらえるのにはそこまで苦労しないかもしれません。ですが、誰に書いてもらうかとなると困ったところで、非常に重要な点にも関わらず、なかなか学生には判断がつかないのではないのでしょうか。判断基準は様々なブログ等で書かれておりそちらも参考にしてもらいたいのですが、端的に言えばその先生がアメリカの学会で名が知られているかどうかが重要で、具体的には①英語で研究業績が多くあるか、②その業績はいわゆる有名雑誌に載っているものか、③その先生がアメリカ式の推薦状を書くのに慣れているかという点が重要だと思います。ここで注意するのはアメリカで名が知られているというのと、日本で有名かどうかはまた別の問題ということです。例えば、メディアに多数出演されて日本の政策に大きなインパクトを持つ先生でも、意外と英語の業績は少ないということはあるかもしれません*1また、昔は精力的に研究を発表していても最近はそうでもなく、アメリカの学会から忘れられているなんて場合もあるかもしれません。いずれにせよ、日本での知名度ではなくアメリカの学会での知名度が命で、それは研究によってある程度測ることができると思います。また、(例外は何人もいると思いますが)海外でPh.D.を取られてない先生の場合、推薦状の書き方がわからずひどい推薦文を書いてしまうという噂も耳にします。なので海外で学位を取られた先生の方が安心できるというのはよく聞く話です。(ただ、海外で学位を取られた方でも推薦状を書いた経験がない場合もあるとは思うので、判断が難しいところです。その点、海外で教えた経験のある先生は推薦文を書く機会は比較的あると思うので安心できるかもしれません。)

 

また、英語での研究能力を証明するために1人は外国人の先生に書いてもらうと良いというのもよく聞きます。留学経験者の場合、留学先の先生に書いてもらうと良いのではないでしょうか。(もっとも私は留学先の先生に書いてもらいませんでしたが...)

 

加えて、最近の政治学ですと3人のうち1人は(計量)method系の先生に書いてもらうのが良いという話も聞きます。Political Theoryや定性的手法を専門にする学生もいる以上、必ずしもそれが必須という訳ではないと思いますが、確かにアジアからの留学生に求められやすく、かつ、能力の証明が比較的簡単なのはmethod系の能力だというのは理解できます。ですが、いざ日本でmethod系の先生を探してみると、methodを専門にしている(もしくは、専門にしてないまでも教えられる)先生方は非常に少なく、この要素を満たそうとするのは難しい現状があります。

一つの案としては、経済系の先生に書いてもらうというのがあるかなと思います。実際、ミクロの先生に推薦状を書いてもらって成功した先輩を一人知っています。ですが、今度はアメリカの政治学界で名前が知られているかという問題が出てくるかなと思います。難しいところですね。

 

ここまで、いろいろ述べてきましたが、全てを理想的に満たすことなどほとんどなく、どこかで(もしくは多くの点で)妥協しなければならないのが日本からの出願の実情だと思います。場合によっては信用できる先生に、だれに推薦状を頼むか相談するのも一つの手だと思います。

 

また、最初の話に戻りますが、どの先生かに書いてもらうかだけではなく、どんな内容を書いてもらうかも重要だと思います。その際、その先生の授業で良い成績を取れているのはもちろんのこと、どれだけの期間自分のことを知ってくれているかという点も重要になる気がします。(というのも、これらの内容は推薦状におそらく書かれるだろう内容だからです。特に期間については客観的にその生徒のことをどの程度知っているのかを示す指標になり得ます。まあここら辺はあくまで推察なのですが。)

 

私の場合、推薦状に関しては非常にラッキーで、もし他の出願者より優れたところがあるとするならここくらいしかないと思っています。3人の先生方のうち1人は自分のことを長く知っており、海外でPhDを取られている指導教官に書いてもらいました。大変ありがたいことにその先生は自分のことを高く評価してくださっていることは普段からの関係で伝わってきましたので安心して依頼することができました。残りの2人はmethod系の先生で、普段はアメリカで教えておられますが、たまたま日本の大学で出張授業をもつ機会があり、それに参加させていただきました。その授業は単なる講演ではなく、成績がつく授業だったので推薦状が書きやすかったのではないかと思います。両方とも悪い成績ではなかったので思い切って推薦状を依頼しました。n=2の経験ですが、推薦状はそこまで深い関係ではなくとも頼んでみると意外にOKをもらえるので勇気を持って頼んでみるのが吉だと思います。(それと同時に米国院の入試の厳しさについて説明されるのですが笑。)ちなみに、推薦状の内容については自分で見ることはできません。なので今でも自分の推薦状がどんな内容が書かれていたのかは不明なままです。(一応、入試が終わった後にどんな推薦状だったのかをみれる権利があるのですが全て放棄しました。というのも、放棄しない場合、推薦状の内容が後から見られることを想定して悪いことが書きにくくなる可能性があり、大学側は私が放棄したのかが見れるため、そのような推薦状の信用度が下がることを恐れたためです。考えすぎかもしれませんが。)

 

 

・GPAと成績証明書(履修表)

GPAも重要だと言われる要素の一つです。とは言うものの、ここについてはあまり書くことがありません。というのも、成績はがんばれとしか言えませんし、また、海外院に進学することを考え始めた段階では改善するのが手遅れになる場合も多いだろうからです。こればっかりはどうしようもなく、万一手遅れな場合は過去の自分を恨むしかありません。かといって、GPAが低いからといって即、来世に期待(現世は諦める)となる必要はないとは思います。GPAはあくまで複数の申請書類のひとつですし、大学によってはOverallだけでなく専門科目のみのGPAも併せて記入させるところもあります。Ph.D.に行こうとするくらいなので専門科目だけならGPAは良いという人も多いのではないでしょうか。実際、GPAだけでなく履修表を提出させるのもどんな科目を履修してきたかだけでなく、専門科目でどれだけ成績が取れているかをみる目的があると推測しています。そのため、専門科目のみのGPAさえ良ければ勝負できる可能性があります。また、特に低い理由がある場合はSOPなどに理由を書くのも良い案かもしれません。

 

 

以上、長文にお付き合いいただきありがとうございました。次回奨学金について書こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:特定の個人を指したものではなく一般論です。