紺青Diary

国際政治とアメリカ留学

アメリカ大学院挑戦記(3)申請書類について(SOP、スコア、Writing Sample、推薦状)

こんにちは、第3回目の記事です。前回の記事はこちらから。

 

今回は、大学に提出する申請書類についてです。記憶があやふやな部分もあるのですが、これ以上忘れないうちに書き上げておきます。

 

まず最初に、あまり詳しくない友人などによく質問されることなのですが、アメリカの大学院は日本と違い書類審査のみなので、基本的には合否は提出した書類の内容のみで決定されることになります。また、提出書類は基本的に各大学共通しているので、受験する大学院を増やすことはあまり負担増になりません。

 

提出する書類としては、主にStatement of Purpose(SOP)、GRETOEFLのスコア、Writing Sample、推薦状3枚、GPAと成績証明書(履修表)があると思いますが、この中でもSOPと推薦状が特に重要だと聞きます。以下、自分がどんなことを考えて各書類を準備したのか書いていきます。

 

・SOP

大学でどんな研究をしたいか、それはなぜか、そのためにどんなことをしてきたか、なぜその大学に応募したのかを書く書類で、日本で言うと志願書と研究計画書が合わさった書類にあたると思います。大体レターサイズで2-3枚くらいの長さですが、大学によって細かい規程があり、指定される文字数が違っていたり、ダブルスペースかどうかみたいな違いがあります。また、SOPという名前ではなくStatement of Academic Purposeという名前だったりする場合もありました。私は11月から書き始めましたが、出願書類の中でも特に重要な書類なのでもっと早くから書き始め、もっと練りに練るべきだったと多少後悔しています。また、最初はSOPと言われても何を書いたらわからないと思うので、他の人に見てもらったり、先輩の書類を見せてみると良いと思います。また、一度書いたSOPについては様々な人に見てもらい改善を重ねることが重要だと思います。

私の場合、ある有名なアメリカで教えている先生が東大で行った出張授業に参加した(潜らせてもらった)際、その授業にいたアメリカの大学院に進学する/している先輩方に頼んで、実際に書いたSOPを見せてもらいました。また、指導教官の先輩や英語ネイティブの友人に書いたものを見てもらい、何回も直してもらいました。個人的には、SOPは研究計画書と志願書を兼ねるためか、通常日本で書くような研究計画書のように先行研究の整理や自分の問い等にどう答えるかだけでなく、それらと大学への志望理由やこれまでの取り組みを結び付ける形で書くのが新鮮かつ慣れない点でした。また、後述するように英語の点数が不安だったので、その言い訳(時間がなかった等)を書きました。また、最後に英文校正サービスを使いました。

 

GRETOEFLのスコア

大体の点数のレンジについては既に記載しましたが、再度記載します。

TOEFL 100−105/ 120

GRE  Verval 145−150/ 170

    Math 165−170/ 170

    Writing  3.0-4.0/ 6.0

 

TOEFLは本来は春までにはとっておくべきものですが、最終的に100点を超えたのは9月になってからで4回目の受験でした。(対策自体は1月から開始していました。)多くの大学では申請条件として100点を基準にしており、これをギリギリ超えただけでは申請者の中では最低点近くになってしまいます。研究を英語で行うことを考えると100点ギリギリというのは心許ないですし、何より大学側から見たときこの生徒は博士課程を最後まで生き残れるかという不安要素が強くなってしまいます。なので、私が言えたことではありませんがより点数をとるべきだと感じますし、私の点数では十分ではないと思います。英語は昔から苦手だったのですが、これからも悩まされると思います。

 

また、GREについては夏くらいから対策を開始し、9月に1回目、10月に2回目を受けました。結果は納得できる点数ではありませんでしたが(特にVerval とWriting)、受験料の高さや時間のなさなどからやむなく受験を終了しました。海外からの留学生だと専門にもよりますが、あまりVervalとWritingは見られないという噂も聞きます。特に私の場合は計量を専門にする予定だったので、あまり英語力については見られなかったのかもしれません。また、大学によってこれらの点数を重視するかどうかは変わるという(真偽がわからない)噂も聞きますし、他の要素も含め総合的に判断される(と思う)ので、点数が低いからといって常に自動的にアウトになるわけでもないと思います。一方で、(当たり前ですが)これらの点数は高いことに越したことはなく、ある有名トップスクールの先生によると、TOEFLGREはほぼ満点近くとってくるのは当たり前で、そこからSOPや推薦状の勝負になるという趣旨のことをおっしゃっていました。なので、合格の可能性を少しでも上げるためにも良い点をとっておくのは重要だと思いますし、競争率の高いトップスクールへの合格を目指すならGREで見劣りしないというのは尚更重要だと思います。悩ましいのは、人がかけられるリソースは(常に)限られていることで、私のような非ネイティブにとってはGREのverval, writingで良い点をとるためにはかなりのリソースを投入する必要があることに鑑みても、どのくらいの点数で妥協するかは難しいところだと思います。一応の目安等を知りたい方は他のブログを参考にしてください。

 

・Writing Sample

自分の研究を論文形式で提出します。私は卒論を英訳したものを提出しました。また、英訳に際してSOP同様、英文校正サービスを使いました(が、当時利用したところはあまりクオリティーが高くなかったのではと思っています、お金はケチらない方がいいです笑)。分量や形式については大学によって違いがあるのですが、大体20-25ページを上限にしているところが多かった印象です。また、細かな点ではありますが、研究を開始する基礎力があることを示すために(特に私は計量とゲームをやりたいと言っていたので)、書く際にはLaTeXを使って数式を綺麗に出力したり、係数の表を出す際にはRのstargazerパッケージを使ったりと、ぱっと見で研究に必要なスキルが備わっている雰囲気を(成功しているかは置いておいて)醸し出すようにしました。 

もっとも、このWriting Sampleに関しては、どう考えてもcommittee側に全員分を細かくみる時間はなさそうなので、ある程度選定した後の絞り込みや、最後の数人を決める際に使うのではないかと想像しています。

 

 

・推薦状3枚

先ほども書きましたが、推薦状は非常に重要だと言われています。アメリカでは(日本でも)大学によって学生の能力に差があるためGPAは参考になっても必ずしも絶対の指標ではありませんし、また、GREなどのテスト結果は研究能力といつも比例するとは限りません。その中で、伝統的に推薦状という制度が学生の能力を評価する手段になっているのだと思います。

推薦状で重要なのは誰に書いてもらうか、そして、どんな内容なのかだと思います。海外院を目指す学生なら専門の授業で良い成績をとることはそこまで難しいことではないと思うため、良い内容を書いてもらえるのにはそこまで苦労しないかもしれません。ですが、誰に書いてもらうかとなると困ったところで、非常に重要な点にも関わらず、なかなか学生には判断がつかないのではないのでしょうか。判断基準は様々なブログ等で書かれておりそちらも参考にしてもらいたいのですが、端的に言えばその先生がアメリカの学会で名が知られているかどうかが重要で、具体的には①英語で研究業績が多くあるか、②その業績はいわゆる有名雑誌に載っているものか、③その先生がアメリカ式の推薦状を書くのに慣れているかという点が重要だと思います。ここで注意するのはアメリカで名が知られているというのと、日本で有名かどうかはまた別の問題ということです。例えば、メディアに多数出演されて日本の政策に大きなインパクトを持つ先生でも、意外と英語の業績は少ないということはあるかもしれません*1また、昔は精力的に研究を発表していても最近はそうでもなく、アメリカの学会から忘れられているなんて場合もあるかもしれません。いずれにせよ、日本での知名度ではなくアメリカの学会での知名度が命で、それは研究によってある程度測ることができると思います。また、(例外は何人もいると思いますが)海外でPh.D.を取られてない先生の場合、推薦状の書き方がわからずひどい推薦文を書いてしまうという噂も耳にします。なので海外で学位を取られた先生の方が安心できるというのはよく聞く話です。(ただ、海外で学位を取られた方でも推薦状を書いた経験がない場合もあるとは思うので、判断が難しいところです。その点、海外で教えた経験のある先生は推薦文を書く機会は比較的あると思うので安心できるかもしれません。)

 

また、英語での研究能力を証明するために1人は外国人の先生に書いてもらうと良いというのもよく聞きます。留学経験者の場合、留学先の先生に書いてもらうと良いのではないでしょうか。(もっとも私は留学先の先生に書いてもらいませんでしたが...)

 

加えて、最近の政治学ですと3人のうち1人は(計量)method系の先生に書いてもらうのが良いという話も聞きます。Political Theoryや定性的手法を専門にする学生もいる以上、必ずしもそれが必須という訳ではないと思いますが、確かにアジアからの留学生に求められやすく、かつ、能力の証明が比較的簡単なのはmethod系の能力だというのは理解できます。ですが、いざ日本でmethod系の先生を探してみると、methodを専門にしている(もしくは、専門にしてないまでも教えられる)先生方は非常に少なく、この要素を満たそうとするのは難しい現状があります。

一つの案としては、経済系の先生に書いてもらうというのがあるかなと思います。実際、ミクロの先生に推薦状を書いてもらって成功した先輩を一人知っています。ですが、今度はアメリカの政治学界で名前が知られているかという問題が出てくるかなと思います。難しいところですね。

 

ここまで、いろいろ述べてきましたが、全てを理想的に満たすことなどほとんどなく、どこかで(もしくは多くの点で)妥協しなければならないのが日本からの出願の実情だと思います。場合によっては信用できる先生に、だれに推薦状を頼むか相談するのも一つの手だと思います。

 

また、最初の話に戻りますが、どの先生かに書いてもらうかだけではなく、どんな内容を書いてもらうかも重要だと思います。その際、その先生の授業で良い成績を取れているのはもちろんのこと、どれだけの期間自分のことを知ってくれているかという点も重要になる気がします。(というのも、これらの内容は推薦状におそらく書かれるだろう内容だからです。特に期間については客観的にその生徒のことをどの程度知っているのかを示す指標になり得ます。まあここら辺はあくまで推察なのですが。)

 

私の場合、推薦状に関しては非常にラッキーで、もし他の出願者より優れたところがあるとするならここくらいしかないと思っています。3人の先生方のうち1人は自分のことを長く知っており、海外でPhDを取られている指導教官に書いてもらいました。大変ありがたいことにその先生は自分のことを高く評価してくださっていることは普段からの関係で伝わってきましたので安心して依頼することができました。残りの2人はmethod系の先生で、普段はアメリカで教えておられますが、たまたま日本の大学で出張授業をもつ機会があり、それに参加させていただきました。その授業は単なる講演ではなく、成績がつく授業だったので推薦状が書きやすかったのではないかと思います。両方とも悪い成績ではなかったので思い切って推薦状を依頼しました。n=2の経験ですが、推薦状はそこまで深い関係ではなくとも頼んでみると意外にOKをもらえるので勇気を持って頼んでみるのが吉だと思います。(それと同時に米国院の入試の厳しさについて説明されるのですが笑。)ちなみに、推薦状の内容については自分で見ることはできません。なので今でも自分の推薦状がどんな内容が書かれていたのかは不明なままです。(一応、入試が終わった後にどんな推薦状だったのかをみれる権利があるのですが全て放棄しました。というのも、放棄しない場合、推薦状の内容が後から見られることを想定して悪いことが書きにくくなる可能性があり、大学側は私が放棄したのかが見れるため、そのような推薦状の信用度が下がることを恐れたためです。考えすぎかもしれませんが。)

 

 

・GPAと成績証明書(履修表)

GPAも重要だと言われる要素の一つです。とは言うものの、ここについてはあまり書くことがありません。というのも、成績はがんばれとしか言えませんし、また、海外院に進学することを考え始めた段階では改善するのが手遅れになる場合も多いだろうからです。こればっかりはどうしようもなく、万一手遅れな場合は過去の自分を恨むしかありません。かといって、GPAが低いからといって即、来世に期待(現世は諦める)となる必要はないとは思います。GPAはあくまで複数の申請書類のひとつですし、大学によってはOverallだけでなく専門科目のみのGPAも併せて記入させるところもあります。Ph.D.に行こうとするくらいなので専門科目だけならGPAは良いという人も多いのではないでしょうか。実際、GPAだけでなく履修表を提出させるのもどんな科目を履修してきたかだけでなく、専門科目でどれだけ成績が取れているかをみる目的があると推測しています。そのため、専門科目のみのGPAさえ良ければ勝負できる可能性があります。また、特に低い理由がある場合はSOPなどに理由を書くのも良い案かもしれません。

 

 

以上、長文にお付き合いいただきありがとうございました。次回奨学金について書こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:特定の個人を指したものではなく一般論です。